着物の左前とは?間違いといわれる理由や正しい着方を解説
着物の着方には「左前」と「右前」があることをご存じでしょうか。
特に左前は間違った着方とされており、その理由を知らないまま着てしまうと、重要な場面で恥ずかしい思いをするかもしれません。
この記事では、着物の左前が間違いとされる理由や、正しく着るためのポイント、そして初心者でも簡単に覚えられる方法を詳しく解説します。
さらに、着物を美しく着こなすためのコツもご紹介するので、着物を楽しみたい方はぜひ参考にしてくださいね。
着物の左前とは? なぜ間違いなの?
着物の「左前」とは、相手から見たときに着物の左襟が右襟の上に重なっている状態を指します。
自分から見ると右襟が上になるため混乱しやすいですが、着物の合わせは「相手から見たときの形」が基本となるため注意が必要です。
左前は、一般的に故人に着せる「死装束」の着方として知られています。
そのため、日常でこの着方をすると「縁起が悪い」「不吉」とされ、間違った着方と見なされることが多いのです。
死装束を左前にする理由は「逆さ事(さかさごと)」という考え方が影響しています。
これは、日常とは逆のことをして不吉を避けようとする、魔よけの風習です。
この他にも「左前を尊いとする考え方から、故人を神仏に近い尊い存在として敬っているため」「生きている人と故人を区別するため」など、さまざまな説が存在します。
浴衣の場合も左前は間違い?
浴衣は夏の風物詩として着られるだけではなく、旅館でのくつろぎ着としても一年中親しまれています。
着物に比べると気軽に着られる印象がありますが、浴衣もれっきとした和装の一つ。着物と同じく左前で着るのは間違いです。
花火大会や旅先などで着用する機会の多い浴衣はもちろんのこと、甚平をはじめとする他の和装においても右前が正しい合わせ方とされています。
間違った合わせ方を避けるためにも、着物の種類や着用シーンに関わらず、全ての和装が「右側」と覚えておくと安心でしょう。
「左前」にまつわることわざ
「左前になる」ということわざをご存じでしょうか?
これは、着物を左前に着るのが「縁起が悪い」「不吉」とされたことから生まれた言葉です。
「左前になる」は、不吉なイメージが転じて「経済状況が悪くなる」「物事が順調にいかなくなる」といった、悪い方向へ進む様子を表す言葉として使われます。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、和装文化に根差した言葉として覚えておくと面白いかもしれません。
着物の右前とは?なぜ正しいの?
着物を着るときは「右前」が正しい合わせ方とされています。
右前とは、相手から見て右襟が左襟の上に重なっている状態を指し、自分から見た場合は左襟が上になります。
着物の合わせは「相手から見たときの形」を基準とするため、誤った着方をしないよう注意しましょう。
着物を右前で着用するようになったのは、実は奈良時代からとされています。
719年に発布された「衣服令(えぶくりょう)」によるものです。
この衣服令にある「初令天下百姓右襟」では、全ての人々が着物を右前で着るように定められました。
当時影響を受けていた中国の習慣に倣ったことや、右前の方が利き腕が使いやすく日常の動きや労働に適しているという実用的な理由も関係しているようです。
着物の左前・右前を間違えないための覚え方
着物の左前・右前は混乱しやすいため、覚え方を知っておくと安心です。
以下のポイントを参考にしてみましょう。
- 相手から見たときに「y」の字に見えるように襟を重ねる: 相手から見て襟元がアルファベットの「y」の字に見えるのが「右前」です。襟を重ねる際にこの形を意識すると覚えやすいでしょう。
- 右手を襟元に入れやすい状態にする: 懐に右手を入れやすい状態が「右前」です。これにより襟元を直しやすくなるメリットがあります。
- 「洋服の合わせ方と逆」と覚える(※女性の場合): 一般的に女性の洋服はボタンが左前になります。そのため「洋服と逆」と考えると、右前が正しいと覚えやすくなります。
日常的に着物を着ない方も、いざというときに間違えないようこれらの覚え方を取り入れてみてください。
着物の前合わせをきれいにするポイント
着物をきれいに着こなすためには、前合わせを美しく整えることが大切です。
以下のポイントを意識すると、より整った印象になります。
- 着物の下前を少し持ち上げる
- 背縫いが背中とお尻の真ん中を通っているか確認する
下前とは、自分から見て右側にある部分のことです。
下前を持ち上げ裾をやや短くすることで、上前と重ねたときに裾から下前が見えず、裾も広がらずにきれいに着こなせるでしょう。
また、背縫い(背中の縫い目)が背中の中心を通っているのが美しい着付けとされるため、左右のバランスを意識すると良いでしょう。
ほんの少しの工夫で、着物の印象がぐっと良くなります。
鏡の前で姿勢やバランスを確認しながら着付けを進めましょう。
正しい着方で着物を楽しもう
着物を楽しむためには、合わせ方の基本をしっかり押さえることが大切です。
「左前」は故人の着方であるため、日常では間違いとされています。
「右前」の着方をしっかり身に付ければ、自信を持って着物を楽しめるだけでなく、より上品で洗練された印象を与えられるでしょう。
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